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わたしらしく人生を楽しむヒント番外編

服、モノ、コトのこれからの価値観

ファッション界の一線から札幌でのリラックスした暮らしへとシフトした初美さん。前回まではご自身の生活や心の変化などをお伺いしました。番外編の今回は、現在見ている服やモノ、コトなど、ご自身の変化した価値観について、初美さんの「いま」を伺いました。

神田: 時代は様々に変化していて、モノは値段で見る以外にも、本来の価値そのものが必要な気がします。お二人はこんな流れをどう見ていらっしゃいますか?

岡本: これまでの消費するだけの社会から、こだわりのあるものづくりが認められる時代になりましたよね。安いから良い、というだけではなく、生産背景や素材のこだわりなど、ストーリーのあるものづくりに価値を見出している方も増えているような感じがします。全体がただ消費していくことから、自分らしい生活を模索する方向へシフトしているような感じもありますよね。

初美:そうね。情報も何もかも効率やスピード社会でもある中で、私はようやくゆっくりとした時間と、そこにある季節時々の風景や生活を楽しみ始めたところです。

今は昔ならではのものづくりにも惹かれていて「民芸運動の父」と呼ばれる柳宗悦が説いている思想なんかが、改めて響いてくる。「美は暮らしの中に有る」というその本質的なメッセージに遅ればせながら共感しています。

敬子: 美術館にいくことだけがアートに触れることではなく、生活やファッションしかり、毎日の中でそれを感じることが、センスを様々な角度から磨くキーワードであったりもしますしね。

初美: もう、たくさんはいらないので、何でもなんの気なしに選ぶことではなくて、日常に使う物ですら、物を通じて作り手の思いを感じられる事はある意味贅沢だなと。凛としながらも優しさを感じる物、時には寂しいストーリーを感じる物すらあると思います。

でも、どれも自分にとって何か心が動くもので、安価高価ではないのかもしれない。各々が自分を豊かにしてくれる物を選ぶ「心眼」が大切かと思います。

神田:確かに、メディアであれこれ情報が溢れている今、何が本当で何がビジネス的なものかがわかりづらくなっています。その中で、自分にとって、必要であり価値があるものを自分で選び取れる眼を持つことですね。それは物のストーリーかもしれないし、思い出かもしれない、その人にしかわからない、心がどう動くのか。

敬子:初美さんが時代を作ってきたなかでファッションをただ売れる物ではなく、その手前にあるコンセプトから考え抜いてきた。その心の眼と言われる見方が生活全体に広がっている感じですね。ファッションで培ってきた目は、きっと住む場所が違えど変わらないでしょうし。

初美:そうね。ファッションそのものに対する価値観はきっと全く変わっていないのだと思います。50代、東京にいた頃から「タイムレス」をコンセプトに服を選ぶようにしてきていて。それが環境が変わって、外向きの服選びから、内向きに変わってきたのかな。

敬子:自分が気持ちいいとか、居心地がいいとか、年齢を重ねると、気張って服を着るのではなく、自分の心地よさが一番大事になってくる。

神田:敬子さんが作るKOが大事にしているところですよね。素材はオーガニックコットンを中心に使っていますが、それはオーガニックだからの先にある、気持ちいいからを大切に選んでいる。だからこそ、天然素材としてシルクや麻も視野に入れて、気持ちよく機能的であれば使う。オーガニックなブランドです!またはデザイン性が大事です!と頭でっかちにならす、自分らしく、気持ちよく、でも毎日が楽しくなる服。

敬子:そう、今日のわたし、ちょっと素敵!て自分の気分があがる、が大事だからね。 

 

神田: 初美さんはいまはどんな風に服を選んでいますか?

初美:札幌で自然の中にいることもあって、そして年齢的にもかな、軽い服を選ぶ様になりました。重くてデザインが詰め込まれたものは窮屈で。

おのずとアクセサリーはスキンジュエリー(華奢でシンプルな肌馴染みのいいジュエリー)が日常的にはちょうどよいですし、車で動くことも多いので、バックも小さめなものを選びます。

敬子:住む場所やライフスタイルによって、着る服やニュアンスは全く変わりますよね。私も昔、鎌倉に住んだときに、都会で使っていたブランドのレザーのアイテムや、化繊の固い服、重い服なんかはすべて断捨離をして、通気性のよい天然素材が中心になりました。

初美:とくに夏は風通しの良いシルエットの服で、サラッと気持ちのいい天然素材を選びます。ほんと、今は心地良さがテーマですね。

神田:もう重いとか、通気性が悪いとか、痒くなるとか、そういう余計なストレスはいらないですし、何だか息苦しいですよね。

初美:ちょっと外出する時は、品良く見える超長綿(extla long cotton)の服を好んで着ています。少し光沢があって、品のあるコットンの風合いが好きです。

先日、別々の日にTシャツとボトムを購入したら、意識はしていなかったのだけど、どちらもオーガニックコットンの物を選んでいました。きっと、今の自分に心地良い物を知らずに選んでいた様です。

神田:オーガニックコットンは名の通り、オーガニックで栽培していて、みんなが丁寧に志しを持ち栽培していることや、過重労働や環境負荷などに配慮して倫理的に製造してるものが多いので、そこでも気持ちよさを感じる方もいらっしゃるように感じます。さらにコットンは綿花なので品質があり、和綿は繊維が短め、超長綿は長めなど品種により特徴がある。繊維が細く長いものが、細くて強い糸になり、結果なめらかで上質な生地ができる。綿を品種で見分けて、気分によって綿を着分けているところが、やはり、さすが初美さんです(笑)

敬子:ダテに長年やってないからね(笑)素材にはうるさいはず!なんせナチュラルこそが、ビューティーだから。

初美: そうね、生地には多少うるさいかもしれないわね。

神田:いまnanadecor では島根県の奥出雲にてコットンを種から栽培しているんですよ。その綿花を糸にして生地を作っています。この繊維を調べたら、世界的に最高級の品種よりも繊維長が長かったんです。自称、世界最高峰!の品質ということで、来年は種をお分けしたいです。出雲にもぜひ見にいらして下さい。

敬子:出雲や山陰も綺麗だよね。雪も降るから、北海道の気候にも合うかもしれないね。ここは札幌なのに裏に山があって気持ちいいし、きのこも山菜も採れるなんて、本当に豊かですね。冬は寒いから大変そうだけど。

初美: 私は北海道に生まれたけれど、離れている時間も長かったので、最初はどんな生活で、どんな服を着たらいいかしら、と思いました。でもここでは自然や季節と共にあることが、暮らしそのものなんだ、と思えてきて。しかも、急に寒くなったり、キャンピングカーで遊びに行ったりするので、アウトドアブランドのものを着るようになりました。今はまた新しい視点でのファッションとの関わりを楽しんでいます。ゴールドウィンが扱うブランドは早くからサスティナブルなもの作りをしているし、冬物は特に、軽くて温かなものも愛用していて、とっても機能的です。

敬子:確かにアウトドアのブランドの本気のものづくりや、機能はリスペクトですよね。はおのずと環境を意識して作られているものも多いですし、軽くて、動きやすくて、優秀。私も「山と道」というブランドのウールのインナーやバックパックなど、いろいろ持っています。

 

神田:スポーツもアウトドアも、ここでもお二人の得意技のMIXスタイルが楽しそう。ストーリーのあるものづくりや機能的であることがベースで、最後は着心地。KO然り、テーマは軽さと心地よさ、敬子さんはプラス色ですね!

敬子:そうですね、KOは素材のこだわりに加えて積極的にカラフルな色や柄を使っています。上質な素材であれば肌なじみも良いので、みなさんにも上手に取り入れてもらいたいなと思っています。売るために作るというより、私が欲しいから作る、日時の服です。

初美:モリちゃん(敬子さんの旧姓での呼び名)は私が知る限り、ファッションの領域だけではなくて、マルチに活動していますよね。だからこそ、このブランドはビジネス(生活するための)ではなく、コミュニケーションを楽しむことが軸なんでしょうね。それが「岡本敬子」らしいな、と思います。

敬子:そうですね。こうしてインタビューで初美さんから改めてお話できたり、ファッションを通して、人生の楽しみ方を伝えられたら嬉しいかな。

神田: 初美さんのお話でも感じましたが、敬子さんも、ファッションがあることで人生がより豊かになっている。ただ着飾ることではなく、自分らしく日常にあるファッションを楽しむことが、もっと後半戦の人生をハッピーにしてくれるよ、ということをKOを通して伝えているのかもしれませんね。お二人は自然とそこに向かっていらっしゃいます。初美さんはこれから、何か考えていらっしゃるんですか?

初美:新しいことを1から始めるというのは、とてもエネルギーが入りますよね。仕事も結婚も流れに沿ってきた人生なので、焚き火カフェでもやろうかしら(笑)

神田:すでに皆さん初美さんのところに遊びに来て、都会の疲れを置いて行っているんじゃないですか? ここでの焚き火でほっとして帰る。

敬子:まさに初美リトリートですね。私たちもお蕎麦もご馳走になり、すっかりリラックスしてしまいました。今回は改めてたくさんお話しをしながら、自分にも気づくことがたくさんありました。ありがとうございました。

初美:ぜひまたゆっくり遊びに来てくださいね。

番外編はお二人のファッションを通じて、今の価値観について伺いました。お話をしながら、過去を思い出しながら、ファッションとの関わりを紐解いてくださった初美さん。

札幌に越されて少し時間が経った今、敬子さんと一緒に、かつ客観的に東京での時間を俯瞰してみる時間、私からは今の生活には異なるスケールの、本来の豊かさ=幸せがあるように感じました。

お二人に共通する、ファッションを楽しむことそのものが、人生に彩りを加えてくれる、という生き方。これから私たちKOのブランドでは、ファッションとの自分らしい関わり方を、これからも丁寧にお伝えしていきたいと思います!

まとめ:nanadecorディレクター神田恵実


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