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私らしく人生を楽しむヒント|飲食ディレクター・梅北奈鼓 -part3-

Part3
引き寄せられた飲食の道、そして気づいた「日常の幸せ」

自分らしく、人生の後半戦を楽しんでいこう!というメッセージを届ける本連載。

第3回のゲストは、鹿児島で複数の人気飲食店を展開する飲食ディレクター・梅北奈鼓さんです。

私たちが年に2回鹿児島でフェアを行っているのが奈鼓さんが経営する「照国オリーブラボ」と言うオリーブオイルの専門店です。

梅北奈鼓さんをお迎えしてお届けしてきた連載も今回が最終回。

絶対にやらないと誓っていたはずの飲食業に、なぜ奈鼓さんは飛び込むことになったのか。実体験から生まれた独自の経営論と、お店の未来についてお話を伺いました。

ご縁からの飲食デビューで楽しさに出会う

神田:オリーブオイルや野菜ソムリエの資格を取った後、どうしてそこから「自分で飲食店を開く」という流れになったのですか? あれほど飲食は嫌だと言っていたのに笑。

梅北:きっかけは、私の母親のお店の上の階でスナックをやっていたお母さんが倒れて、お店を続けられなくなって。「愛着のあるお店だから、知り合いに使って欲しい」ということで、母親経由で話が来ました。東京に行くのも遅れていて、腰掛けのつもりで本当に軽い気持ちで引き受けました。

神田:最初はどんなお店にされたのですか?

梅北:鹿児島でやるなら日当たりが良くて山が見える場所がいいはずなのに、まさかの文化通りの雑居ビルの2階、スナックの跡地です笑。そこで管理薬剤師と管理栄養士の同級生たちと一緒に、体調に合わせた野菜ジュースや薬膳カレーを出す専門店を始めました。「今日の体調に合わせてこれ」というチャートを作って。

神田:野菜ジュースと薬膳なんて、その時代はすごく斬新ですよね。お客さんの反応はいかがでしたか?

梅北:若いOLさんが来るかなと思っていたら、場所柄、夜の街のおじさまたちが同伴の女の子を連れてくるようになって。女の子に好評なので「お酒を飲む前に、豆乳とかぼちゃのポタージュにオリーブオイルをかけたスープで胃を整えてから2軒目に行く」「アフターにまた体調を整えによってくれる」という流れで大ヒットになって笑。思いのほかやりがいもあり、うまくいって、飲食の楽しさを知ったのはあの場所でした。

岡本:時代よりもちょっと早すぎなコンテンツですね。今なら大人気になるヘルシーなアプローチを、その当時からやっていたのが素晴らしい!

梅北:そこからお世話になってきた税理士さんや黒豚の生産者さんのおつながりから背中を押され、あれよあれよという間に3ヶ月後には50人規模のしゃぶしゃぶ店「梅屋」をオープンすることになりました。そこからは楽しいだけじゃなく、本格的な経営の苦労に入っていきました。

大嫌いだったはずの「大家族」が、お店のルーツに

神田:それから20年、今は4店舗を経営されていますね。スタッフが30人以上いらっしゃると大変なことも多いと思いますが、奈鼓さんのお店はスタッフが仲良く、すごくアットホームな雰囲気が印象的です。

岡本:気がついたら、子供の頃にあれだけ大嫌いだった「大家族」の形に、いまのお店がそのままなっているみたいですね。

梅北:スタッフが圧倒的にみんな食いしん坊で、自分の店が大好き。仕事が終わっても帰らずに、そのまま自社のおでん屋さん(名山堀梅屋)に入って飲んでいます。先日の恒例のお花見も、梅屋で夕方5時から夜中の12時まで誰も帰らずに大盛り上がりしました。

神田:スタッフの方同士の距離がすごく近いのですね。経営者として怒ったりすることはないのですか?

梅北:昔はいろいろ言っていたかもしれないけれど、今はある程度見過ごす大人の余裕ができたでしょうか笑。みんな仕事で来ているのですから、おふざけが過ぎたら注意しますけど、本当の大きな溝に入らない限りは本人たちが気づくのを待ちます。店に立っている本人が一番よくわかっていますから。

岡本:素晴らしいチームですね。名山堀のお店を作るときは、最初に私たち夫婦に相談してくれて。紹介した北海道のインポーターさんのワインを鹿児島のみんなが美味しいと飲んでくれるようになって嬉しいです。私たち夫婦がお出汁が美味しいおでんに、オリーブオイル、それに合わせるならやっぱりナチュールのワインがいいんだよね、と。焼酎文化の鹿児島でナチュールワインを理解してもらうのは大変だったと思いますが、コツコツと説明して続けてくれたおかげで、鹿児島にもナチュールの文化ができましたね。

梅北:最初は銘柄ワインではないので全く理解してもらえなかったですし、クレームも多かったのですが、ようやく認められるようになりました。何より、敬子さんと仁さんが鹿児島に来てくださったことは本当に大きくて、お二人の動向が私たちのまわりでは、街の共通の合言葉になっているのです。お二人が選んで通っている店は横のつながりができて、みんな仲良し。その功績は本当に大きいのでありがたいです。

岡本:どこでも良いわけではなくて、私たちも好きなお店を厳選してしています。気に入ったら必ず通うので、自ずと店のメンバーと仲良くなりますよね。

神田:東京ではなしえない、鹿児島ならではのつながりがいいですよね。毎回鹿児島に来ると、みなさん店を行き来して、食でつながっています。

梅北:確かに、私たちのお店は4店舗ともバラバラなんですが、スタッフもお客さまもみんな楽しそうに「回遊」して繋がっていますね。私がもし引退したとしても、このスタッフ同士の繋がりは一生残るだろうなと思えるのが、何よりの幸せです。

幸せは特別なものではなく足元にある

神田:これから先、さらに店舗を増やすなど新しい野望やプランはありますか?

梅北:大きな野望は全然なくて。ようやく20年経ってお店が安定したチームになってきたので、今は一つひとつのお店に肉付けをしていく時期なのかなと思っています。

岡本:年齢を重ねると野望よりも、いかに変わらないでいつものように続けていけるか、日々美味しく楽しく、健やかにいられることが一番の幸せだと気づきます。

梅北:本当にそうですね。特別なことではなく、変わらずに1日1日を精一杯積み上げることが、未来に確実につながっていくんだと思います。

神田:そのためにも心と体をきちんと整えていくことがとても大切ですね。

梅北:今は毎日6時間は必ず寝るようにしていて、起きたらまず、近くのコーヒーショップに出かけることにしています。毎朝走ろうと思うとプレッシャーになるので、外に出て調子が良ければ走ろうという感じです。出かけると少し走ろうかなぁと体が思うので、コーヒーショップ経由で50分から1時間走るルーティンを続けています。走って後悔した日は1日もないので、結果リフレッシュになっています。

神田:敬子さんも毎日ウォーキングをされていますし、お二人は朝のリフレッシュで、メンタルも体も整えているんですね。

梅北:自分が整っていないと、新しい良い話も入ってこない。たくさんの苦労もありましたけれど、こうしてスタッフたちとお客様とつながり、今がある。幸せというのは決して特別なものではなく、朝起きて、体がちゃんと動いて、美味しいものを美味しく食べられる、そんな変わらない日常の中にこそあるのだと痛感しています。

岡本:本当にその通りですね。スタッフそれぞれの個性を見守りながら関わり、暖かな関係があるこそ、周りにそのムードが伝わると思います。何か大きなことをなし得るのも素晴らしいですが、変わらない大切なものを継続し続けることも難しいこと。私たちのKOフェアでも、こうして長くご一緒できて幸せです。いつもスタッフの皆んなが洋服を楽しみに選びに来てくれるのも嬉しいです。

神田:本当にそうですね。おふたりとは長いお付き合いですが、これからも進化しながら、さらに引き続きよろしくお願いします!

「絶対に嫌だ」と思っていた場所が、形を変えて人生で一番愛おしい「大家族」の居場所になる。

奈鼓さんの濃厚な人生の歩みから見えてきたのは、大きな成功や野望ではなく、目の前の日常にある小さな幸せに気づくことの大切さでした。私らしく人生の後半戦を楽しむための、温かいヒントをいただきました。

奈鼓さん、本当にありがとうございました!

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profile
梅北奈鼓

オリーブオイルコンポジター®、オリーブオイルソムリエ。世界オリーブオイルコンテストで日本人審査員を務める。世界中から厳選したオイルや食材を通して、毎日の食卓と暮らしを豊かに彩る提案を行っている。



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